控訴審判決の種類と不利益変更禁止の原則について|弁護士が解説|控訴 弁護士サイト

控訴審判決の種類と不利益変更禁止の原則について|弁護士が解説

控訴・上告コラム 控訴審判決の種類と不利益変更禁止の原則について|弁護士が解説

控訴審判決の種類と不利益変更禁止の原則について|弁護士が解説

控訴審判決の種類

 控訴審の裁判には,控訴棄却決定,控訴棄却判決,破棄判決があり,破棄判決は,差戻し,移送,自判があります。

控訴棄却決定

 控訴棄却決定がされるのは,控訴申立てに不備がある場合(385条)と,控訴申立てが方式に違反し,または控訴権消滅後にされたことが明らかな場合です。
 例えば,控訴趣意書が期間内に提出されない,控訴趣意書に方式違反がある,控訴趣意書に必要な疎明資料・保証書の添付がない控訴趣意書に記載された控訴申立理由が明らかに法定の事由に該当しないとき等です。

控訴棄却判決

 控訴棄却判決がされるのは,控訴申立てが不適法な場合と(395条),法定の控訴理由がない場合(396条)です。

破棄判決

 法定の控訴理由がある場合,第1審を破棄する旨の判決がなされます(397条1項)。
 ところで,1審判決が破棄されると,事件は,1審判決言渡しの前の状態で控訴審裁判所に存在することになるので,何らかの措置をとらなければなりません。ここで採られる措置は,差戻し・移送・自判の3種類です。差戻しとは,1審裁判所にもう一度審理させることです。
 移送とは,1審裁判所と同等の他の裁判所に審理させることです。自判とは,控訴審裁判所が自ら審理することです。この自判が最も多いです。

不利益変更禁止の原則について

 控訴審での審理が終わると,控訴審裁判所が判決や決定といった裁判をします。ここでは,その判決の種類や控訴審裁判所が裁判をする際に妥当する「不利益変更禁止の原則」(刑訴訟402条)について説明します。
 不利益変更禁止の原則とは,被告人・その法定代理人・原審弁護人が控訴をした場合,控訴審裁判所は1審の判決よりも重い刑を科すことができないという原則です。
 控訴を考えている方の中には,控訴をすると,一審よりも重い刑になってしまい,いわばヤブヘビになってしまうのではないかと心配される方もおりますが,その心配はありません。重くなることはないのです。逆に検事が控訴した場合にはこの原則は妥当せず,一審より重くなることがあります。
 なお,この原則によって禁止されるのは,1審判決より刑を重くすることだけであって,事実認定を被告人に不利に変更することは許されます。例えば,一審で認定した酌量すべき動機は,事実誤認であり,誤りであって,動機が悪質だ,しかし,一審の宣告した刑は妥当であるという判決は許されるのです。
 ところで,刑が重くなったか否かについて,素人には判断しにくい場合があります。懲役3年と懲役6年であれば6年の方が重いのは明らかですが,例えば,懲役2年の実刑だったのが,懲役3年執行猶予4年になった場合は,重くなったのでしょうか。
 この判断基準については,「具体的に全体として総合的に観察し,第2審の判決の刑が第1審の判決の刑よりも実質上被告人に不利益であるか否か」によって判断するとされています(最決39・5・7刑集18-4-136)。つまり,刑の種類や執行猶予の有無等といった様々な事情を考慮して,全体的に判断するということです。刑が重くなっても執行猶予がつく場合には,不利益変更にはあたりません(最決昭和55・12・4刑集34-7-499)。

 一応の基準として,刑法10条が用いられます。これが一応の判断基準になります。

刑法10条第1項

 主刑の軽重は、前条に規定する順序による。ただし、無期の禁錮と有期の懲役とでは禁錮を重い刑とし、有期の禁錮の長期が有期の懲役の長期の二倍を超えるときも、禁錮を重い刑とする。
 同種の刑は、長期の長いもの又は多額の多いものを重い刑とし、長期又は多額が同じであるときは、短期の長いもの又は寡額の多いものを重い刑とする。
 二個以上の死刑又は長期若しくは多額及び短期若しくは寡額が同じである同種の刑は、犯情によってその軽重を定める。


「控訴」に関する控訴・上告コラム

「控訴」に関するご依頼者様の「感謝の声」

「控訴」に関する解決実績